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1. 「アナログ」という言葉



 ネット上の絵描きの世界でもよく見る「アナログ」という言葉、本来の意味は一体どれぐらい知られているのでしょうか・・・?

アナログとデジタルの概念図
 「アナログ」と「デジタル」の用語としての定義は、

  アナログ:連続的
  デジタル:離散的(整数値)

で、概念的に表すと右図のようになります。自分は理系人間で、この言葉と併せて定義も覚えたので、本来の意味からずれた使い方を見ると、どうも気になって仕方なくて、こんなページを作っている始末です(笑)。

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 最近「アナログ」って、「ハイテク機器を用いない、手作業の、手間のかかる」という意味で使われていないでしょうか?

 パラパラ漫画や、粘土細工の人形を動かして1コマ1コマ撮影したアニメーションを「アナログ」と言ったり、電子辞書がなくて分厚い辞書を手でめくることを「アナログ的」と言う人に出くわすことがありますが、定義に従うと、前者は明らかに「デジタル」だし、後者は”連続的要素はどこにあるんだ?”と、首をひねらざるを得なかったり(笑)。

 絵の世界でも「アナログ絵・アナログ作業」という言葉が溢れかえっています。「紙に色鉛筆や水彩などの画材で着色した作品」を指している様子で、確かに大概は線も色も連続的で間違ってはいないのですが、どうもひっかかるものがありまして。

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 話が飛びますが、最近の世の中の流れでは、アナログからデジタルへと移行しているものがいくつあります。ビデオテープからDVDだったり、テレビ放送の形態だったり。

 それらは、デジタルの方が情報が劣化しにくい、という利点があるからです。電気的な信号では、連続的なものが「アナログ」で、数字にすると1.14とか1.254623といった小数点以下も全部、情報として意味を持ちます。一方「デジタル」は整数値、0、1、2・・・だけでのやり取りです。

 信号を送るときには、「雑音」と呼ばれるものがどうしても入ります。アナログ信号の場合だと、例えば1.20という情報のつもりで送っても、雑音が混じると、1.21とか1.18という値で信号の受け取り手に届きます。これを繰り返すと、どんどん元のデータが失われてしまいます。

 それが、デジタル信号だと整数値しか意味を成さないので、1として送ったものが1.10.9になったとしても、受け取り手は「これは1だ」と判断でき、雑音による劣化を防ぐことができます。

 この特性でそれぞれを表すと、「ゴミが入ったときに、ゴミも情報になるのがアナログ、ゴミを『ゴミ』として取り除けるのがデジタル」、と表現してもいいかもしれません。

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 これを応用して、絵画はアナログで、文字はデジタル、と例える方もいます。印象派の絵画に他人が一筆描き足したとしても、見る人にとってはそれも含めて1枚の絵ですし、文字情報は筆跡が違ったり漢字が微妙に間違っていたとしても、伝えたい内容自体が変化してしまうことはありません。

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アナログ塗りとデジタル塗り  で、話を戻しますが、「アナログ絵」という呼称について。紙に画材で描いている時点で、連続的な要素があるのには間違いないのですが、気になっているのは、アニメ風の色塗り。コピックやアクリル絵の具で、各パーツの色を均一に塗っていて、中間の色がないので、色の面ではデジタルですよね。上の例で言うと、ゴミがついたら『ゴミ』だと簡単に認識できそうです。

 モノトーン作品漫画のスクリーントーンも、白か黒だけしか無いという意味では、デジタルです。点画の手法も、デジタルな要素が強いと思います。そんな作品を「アナログ絵」と言われた時に、どうも違和感でムズムズしてしまいます。嫌な性格ですねー(笑)。

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 多分、PCの画像ソフトで作成した作品が「デジタル絵」なので、それ以外は対義語の「アナログ」という意図で、使っている面もあると思います。「デジタル絵」という呼称についてはあまり違和感はありません。

 でも、ぼかしやグラデーションを多用している作品は、上の例で言えば、「ゴミがついた時にゴミと判別できない」アナログ的要素もありますよね。完全にデジタル的と思えるのは、ドット絵くらいでしょうか。データの面で言えば、手描き作品だって、スキャンすればデジタルデータになるわけで、WEB上で見る状態で「アナログかデジタルか」は、あまり意味をなさないような。

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 結局、紙に手で描いたか、PCで作成したかの分類の境界を、「アナログ・デジタル」で言い換えているのでしょうね。「手描き・CG」の方が正確なのになぁと思いつつも、ぐるっと一通り考えてみたら、特別持ち上げるほどのことでもないような気もしてきました(ダメじゃん)。ただし、「アナログ作業なので大変です」というのは、やっぱり意味不明です(笑)。


(2006.9.4)


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